店主日記
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ベタ踏み坂
2024年08月26日
開店準備整えた後、松江警察署に向かった。事件があった訳じゃあない。警察署の1階に交通安全協会があって、そこでチャイルドシートを貸してくれる。その予約のためだ。そう、来月の17日に一時帰国で孫が帰って来る。東京に住む末娘も都合付けて帰って来る。長女と合わせて3人帰って来る。楽しみだ。
ルンルン気分で松江署に向かっている時、ハンズフリーの電話が鳴った。何だろう。お早うございます。けやき不動産ですと言って、受話器のボタンを押した。聞きなれた声が飛び込んできた。だが内容は、私を奈落の底に突き落とすものだった。今更何を、そんな気持ちになった。
対処法を考えなければ。こんな時はドライブに尽きる。道の駅「本庄」に向かった。ここのコンビニで冷たい缶コーヒーを買った。その冷たさが、乾いたのどを潤す。ふと、中海を眺めた。波ひとつない中海に「ベタ踏み坂」が浮かんでいた。誰が名付けたかテレビのコマーシャルで有名になった。そのベタ踏み坂が、陽光と中海の湿気とをうまく絡ませて神々しくさえ見せていた。この江島大橋は鳥取県と島根県を結ぶ友好の懸け橋なのかもしれない。そんなことを思いながら、道はあるんだと確かなものを感じた。この朝、私は江島大橋から勇気をもらった。
なぎさ、俺は今ここにいるんだよ。本庄道の駅の駐車場にいるんだよ。空の上から、俺が見えるかい。・・・チャイルドシート予約しておいたよ。来月帰って来るからみんなでドライブ楽しもうな。長男は入院中だけど、久し振りに家族がそろうんだよ。だから、みんなで楽しもうな。楽しみにして待っておこうな。もうすぐだよ。
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ヘクソカズラ
2024年08月24日
皆さんはヘクソカズラという野草をご存じだろうか。山野草好きな私は、知らない花を見るととりあえず写真に写して、山野草図鑑で調べることにしていたので、割と多くの山野草の名は知っている。ヘクソカズラの花は直径数ミリほどの小さな花。でも、どこか可愛いところがあって、私の好む花のひとつなのだ。それにヘクソカズラ、漢字で書くと「屁糞葛」。葉をつぶすと悪臭がするからこの名がついたらしい。不名誉な名だが、どこか私に似たところがあって面白い。
一ヶ月余り前に帯状疱疹を発病した。発疹は黒ずんで、その皮下の痛さもだいぶ和らいできた。だが、困ったことにエアコンの冷気がこの痛さを刺激する。じりじりと痛む痛さに耐えきれず、暖かい所に行きたくなる。無線の電話受話器を持って事務所を一周してみた。ふと目にしたヘクソカズラ。プロパンガス配管パイプに巻き付いていた。やあ、やっと出会えたね。
しかし、小さな事務所を一周したほどで汗ばんでくる。今日も最高気温は33度を超えるという。そして台風も近づいている。どうにか、全国民が平穏に過ごせるよう、そう願う。
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日記「かあちゃんの詩」
2024年08月23日
以前にも書いたけど、違う形でまた書いてみる。妻が亡くなって4ヶ月後の月命日の夜、仏壇の前に胡坐をかいた。焼酎のお湯割りを飲みながら妻に話しかけた。なあ、なぎさ。俺たちはいつも一緒だよな。ずうっと一緒に暮らすんだよな。でも君はもういない。だから、俺が日記付けるから、昔してたように文通しよう。遠距離恋愛時代のように、手紙書こう。俺からの手紙は明日から付けるかあちゃんの詩日記だよ。それを書きながら、俺の心に浮かぶ君の思い出が君からの手紙だよ。
あれから早いものでまる6年が経った。今朝6年目のかあちゃんの詩日記書き上げた。だから6年間続けたことになる。・・・朝の日課の墓参の時、桶に水を汲んで妻の墓石に向かう。まず墓石に頬ずりする。雨に濡れてたって、真冬に冷たく凍ってたって、夏の太陽に熱く焼けついてたって構やしない、頬ずりする。そしてお水あげてロウソクに火をつけて線香を灯す。墓石に額ずきながらしばしの会話が始まる。その会話で、今日のかあちゃんの詩日記は完成する。
今日は忙しかった。まず仕事A。朝9時に現場で待ち合わせをした。店舗の完成度を確認しながら1時間の打ち合わせ。外国籍の人だから言葉の真意が伝わるか心配しながら。そして午後の仕事B。訪問するが、建築物の検査済証が見つからない。市役所に向かった。台帳記載事項証明書の取得の手続きのために。
市役所を後にした。ああ、疲れたなあ。この暑さのせいだろうか。昨日の最高気温は38度を越した。今日の昼にはすでに37度に達していた。夜は当たり前のようにエアコンの中。エアコンの涼しさにはどうもなじめない私。寝不足が続いている。こんな時は妻の顔が浮かんでくる。妻と同じ名の秋鹿なぎさ公園。この駐車場に車を停めると、なぜか心が落ち着いてくる。異常気象のためだろうか、宍道湖に波が立って強い日差しを弾いていた。
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定休日
2024年08月21日
午後2時半に来客の予定。そのことが気になる小心な私、昨夜夢を見た。いつもこう、夢を見るのである。そのことと、暑いためにエアコンの中。エアコン嫌いな私。そのことが相まって、眠りが浅かった。帯状疱疹の具合がまた悪化しそうだ。黒ずんだ発疹の跡の皮下の神経が強く痛む。
朝、出雲市に向かった。入院の息子を訪ねるためだ。久し振りな気がした。一ヶ月前に来てるはずなのに、ずいぶん久し振りな気がした。部屋に入った瞬間は機嫌が悪そうだったのに、私の顔を見ると笑ってくれた。にっこりと笑ってくれた。嬉しかった。あんな顔を見ると嬉しくて涙が出そうになる。
病院を後にして、まだ時間が早いと思った。道の駅、キララ多伎へ行った。海は波ひとつなく、穏やかに凪いでいた。曇り空が風景のコントラストをなくしていた。海岸道路を走って、出雲大社の参門前を通ってみた。まだ夏休みなんだ、そう思った。多くの観光客で賑わっていた。
湖北の道路を帰ることにした。途中、宍道湖グリンパークに寄った。建物までの散策路の池に、ミソハギが咲いていた。2階の展望室から見える宍道湖に、白鳥が4羽浮かんでいた。湖面に並べて建てられた杭の上のそれぞれに、何やら黒い鳥が体を休めていた。展望室の何組かのテーブルに、親子連れがいた。楽しそうだなと感じた。遠い過去の記憶が蘇ってきた。
やっとさっき、来客との交渉が終わった。まだまだ解決しそうにない。これが、不動産業者の仕事なのだと改めて思った。難しいがやりがいがある。今日は定休日、今からスーパーマーケットで買い物をしよう。今夜は何食べようか。酒に合うのがいいな。・・・飲めば、面影がまたグラスに浮かぶ。
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季節の移ろい
2024年08月17日
昨夜早いうちにエアコンを消した。しばらくは残った冷気の中。気温が上がりかけた時に窓を開けた。涼しくはないが、この気温なら何とか過ごせそう。扇風機の風でしばらくは暑さをしのいだ。寝る前になると涼しくなった。窓を全開にして眠りについた。
立秋を過ぎて一週間余りが経った。昼間は依然暑い。異常な暑さが続いている。だが、日差しを見ると秋の気配。あの真夏のギラギラした目にいたいような光線はない。間違いなく、季節は移ろおうとしている。宍道湖の上空にも、斐川平野の空にも真夏の雲はもう見えなかった。