ひたすら山道を走った
無いのは当たり前で、おかしな話だが、昨日の定休日は仕事が無かった。だから朝起きて車に乗った。キャベツが欲しいからとりあえず安来市の道の駅「あらえっさ」。ところがそこにキャベツは無し。木次線の三成駅に併設された道に駅に行こうと決めた。米子市を南下して、中国山地の山道をひたすら走って横田に出た。そして三成駅に着いた。
ゴウヤを手に取った。キュウリとナスとピーマンをかごに入れた。最後にキャベツ。私より20歳以上は若いだろう女性がレジにいた。「このキャベツ、高温で中が少し悪くなっているかもしれないから値段が安くしてあります」。その女性、なぜか優しさが溢れているような、そんな印象を受けた。人柄が表に現れている、そんな気がした。
駐車場を出て帰路に着いた。どんな環境の中で暮らしたら、あんな優しさが醸せるのだろう。レジの女性を考えていた。そしたらどうしてか、過去の記憶がだどんどん蘇ってきた。妻のこと、子供たちのこと、キャンプで遊んだ記憶、海ではしゃいだ記憶。その記憶はだんだん現代に近づいてきた。そしてある日、長女が言った言葉を思い出した。「10歳も若い、女房を先に亡くしたのだから、それはショックだよね」。その言葉を思い出した瞬間、ハンドルを握る瞼が涙でぐちゃぐちゃになってきた。
三成駅に着いた時、二両編成の気動車が小さなディーゼル音を立てて止まっていた。どうもこの歳になるとその昔を回顧する癖がついてしまうらしい。よくこの駅を利用した。小学校の修学旅行からこの駅に帰ってきた。夜は列車の中に新聞紙を敷いて寝た。朝になったら三成駅に着いていた。写真の列車の向こうのプラットホームに下りて、当時蒸気機関車だったすぐ前を線路を渡って駅舎に入った。見方によれば、戦時中疎開して来た子供たちのように。