柿食う秋

2026年10月03日

 秋も深まった8年前の休日、ひとり奥出雲町に向かって車を走らせた。途中、道の駅「おろちの里」に寄った。何気なく売店をのぞくと、柿の実が二つセットになって売られていた。子供の頃を思い出した。よく皮のまま、頬張った記憶を思い出して昼飯代わりにとその二個セットを買った。

 

 「鬼の舌震」の駐車場に車を止めた。柿の実と、カメラを持って歩き始めた。観光季節は終わって、会う人もすれ違う人もいない閑散とした吊り橋の上で柿の実を頬張った。うまいと思った、懐かしいとも思った。すると突然、家族5人でここへ来た一昔前を思い出した。私と、3人のまだ小さな子供達。そして妻がいた。そしてこの吊り橋を歩いていた。

 

 今は柿を頬張りながら、こぼれる涙も拭きもしない私一人がこの吊り橋の上に立っている。今日のこの姿は私のこれからの人生の縮図なんだと思った。そう思ったら、涙の粒はさらに大きくなっていった。この頃よく亡き妻を想う。寂しいなと強く思うのは、深まりゆく秋のせいなのだろうか。それとも、心が老いてきたからだろうか。

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