店主日記
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マツムシソウ
2023年09月29日
先日、午前中に散髪をした。午後の取引の交渉に向かうのに気合を入れるためである。その交渉をある程度進めることができた。その疲れか、今朝は7時半までぐっすりと眠った。そして今朝、昨日の仕事の興奮が冷めやらない気がして車で走ることにした。
八雲町から広瀬町に下りて行った。道の傍らの所々に彼岸花の集団ががあった。きれいに草刈りされた川土手にのんびりと咲く花。荒れた草むらの中にやっと顔を出して窮屈そうに咲く花。ひとりぼっちで寂しそうに咲く花。彼岸花の一生も、人の一生と同じだなと思った。それぞれの人生があるのだなと思った。
そして思った。ひとりになって5年が経った。何とかいろいろな面で無事暮らしている。これもみんな、空の上から見守ってくれている妻のおかげだなと思った。なぎさ、有難う。これからも頼む。でも、無理しない程度にね。気楽でいいよ。・・・かあちゃんの詩日記にそう書いておいた。
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約束だったからね
2023年09月28日
昨日の定休日、お客様の朝の引っ越しのお手伝いを1時間で終え、三瓶山に向かった。墓前で、今日は雨が降りそうだから無理しなくてもいいよって妻が言う。いや、約束だから。雨の日のドライブも俺好きなんだ。今日は楽しもうよ。
国道9号線を西に向かっていたら降り出してきた。でも、小降り。そして出雲市に着いたら本降りになってきた。それもつかの間、長めの間欠ワイパーがちょうどよい。あのアランドロンの映画のフランスの名車、シトロエンのワイパーの音を思い出した。
大田市街地から大田高校の前を通って、いつもの北の原に向かうコースを走った。その中腹あたりから霧が出てきた。その霧は濃くなったり晴れたりしていた。時には視界を遮るほどの深い所もあった。その霧が風によって川のように流れている山肌もあった。なんて幻想的なんだろう、そう思った。
西の原に着いたら薄曇り、だが山の頂は霧で隠れていた。いつもの駐車場でコンビニで買ってきたクリームパンをかじった。私の車の斜め前の駐車の列に広島ナンバーの車が止まった。私ぐらいの年格好の男性がひとり、山の写真を写していた。彼もやもめなんだろうか。過去の記憶が、走馬灯のように心の中を巡っていった。
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秋鹿なぎさ公園
2023年09月26日
朝の出勤の車の中の10分間、今日の、これから一週間の予定を立てるのが私のルーティーンだ。その日の予定は何回も反芻してきたはずなのに、今朝は昨日返さなきゃいけなかったチャイルドシートを返し忘れていることに気が付いた。
開業準備を済ませ、松江署内にある交通安全協会に行った。うっかりしてて遅れてごめんなさいと言って返してきた。せっかく出て来たんだからちょっと車で走ってみよう。そう思った瞬間、ハンドルは秋鹿なぎさ公園へと舵を切っていた。
いつもの場所に立った。波ひとつない宍道湖が広がっていた。その遥向こうに、三瓶山が小さく霞んで見えていた。声を出すのでもないが、私はいつもこの場所でつぶやいている。今度いつ会えるのだろうか。今度孫と会ったらどこへ連れて行ってやろうか。なぎさ、どこがいいと思う?・・・明日は三瓶山に行こうな。
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暑かった夏が秋の気配
2023年09月24日
おさな子が手にして良いものなど我が家には何もない。目が離せない孫がいるために、この一週間の娘の滞在期間中は私が晩御飯を作ることにした。だが私には、家庭料理など作れるわけがない。だから当然、好きだったキャンプで作る、簡単豪快な男料理で終始することになった。
でもな、何かごちそう作ってやりたいなと、そう思った。孫が食べておいしい料理って、と思案していたら思いついた。トンカツにしよう。そうなんだ。私は高校生の時、レストランのアルバイトの厨房で肉料理はよく作っていたんだ。そうだ、トンカツがいい。
大きめの皿に、キャベツの千切りを盛りつけた。そのサイドに、ポテトサラダとパスタをケチャップで炒めたのを置いた。厚めのトンカツ肉をパン粉で揚げた。サクサクサクと数枚に切り分けて先の素材の上に斜めに乗せた。さあ、トンカツの完成だ。
娘たちの、これが我が家での最後の晩餐料理だ。孫が、よく食べた。母に小さくしてもらったトンカツをよく食べた。にこっとして、頬を膨らましておいしそうに食べていた。嬉しかった。もっとごちそうしてやりたいのだが、男の私にはこれぐらいしかできないから、ごめんな。また帰っておいでよ。
写真は中海から見た大山。昨日の朝の別れが寂しくて、寂しさに押しつぶされそうになって、その午後にたまらずに中海一周のドライブに出かけた時に撮ったもの。夏の雲から秋の雲に変ろうとしていたその風景を望遠レンズで切り取ってみた。
そして夜になった。この頃控えめにしていた焼酎を思いっきり飲んだ。無事着いたって言う娘のラインに、焼酎の影響だろうか、寂しくなった、とそう返した。娘の既読に、・・・反省である。
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またな・・・
2023年09月23日
見送り展望デッキから、東京行きの飛行機がすぐそこに見えた。搭乗通路に、ひとつだけ小さな窓がこしらえてあった。そこを見ていると、乗り込んでいく人々がちらりと見えていた。私は目を凝らして見ていた。あ、通った。娘が孫を抱っこして行く横顔がちらりと見えた。あ、っと思わず声を出してしまった。
ジェットエンジンのうなりを高めて、間もなく飛行機は滑走路へ入り、ゆっくりと西へと進んでいった。そしてユータンして宍道湖目指して加速していった。やがて前輪を浮かせ、上空へと飛び立っていって、その姿はだんだん小さくなっていった。やがて視界から消えようとしたその瞬間、太陽の光を弾いてキラリと光った。見えぬ機影を、私はいつまでもいつまでも追い続けていた。
僅か一週間だけの暮らしだったのに、それが思い出となって蘇ってきた。孫の笑顔がまぶたに浮かんだ。娘の笑い声が耳元に蘇ってきた。行ってしまうんだな。今度いつ会えるだろう。またな、また会おうな。達者で暮らせ。
ひとりでの帰り道、グレープが歌う精霊流しをCDで聴いた。無縁坂を聴いた。縁切寺を聴いた。こんな気持ちの日には、グレープの歌声が良く似合う。ボリュームを上げて何回も何回も繰り返し聴いた。歌ってみたが、声は途切れて、また途切れてしまった。