店主日記
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いのちの停車場
2021年08月06日
私はよく本を読む。難しいのじゃなくて、推理小説とか時代小説とか。今、南杏子の「いのちの停車場」をもう少しで読み終えるところだ。この手のものはあまり読まないが、先日読む本が なくなって、近くのコンビニで買ってきたものだ。
いのちの停車場は、救命救急センターを退職して、訪問診療医として働く女医、白石咲和子の物語である。プロローグで始まって1章から6章に物語は分かれている。6歳の女の子が癌で亡くなっていく5章を今読み終えた。女性らしい、優しい描写が涙を誘う。
3年前までは、映画を見ても、テレビドラマを見ても、もちろん本を読んだって、いくら悲しい場面でも泣いてしまうことなど一度もなかったのに、今は違う。一冊の本で何度も瞼を濡らす。すっかり、大人になったんだって自覚する。
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奥出雲おろちループ道の駅
2021年08月05日
目的地を定めずに車を走らせていると、ここに着いてしまう。どこかと言うと、「奥出雲おろちループ道の駅」の駐車場だ。この駐車場に車を止め、エンジン切って窓を全開にして、サンドイッチ食べながら文庫本を読むことが、今の私にとっての幸せの中でもことに幸せなことなのである。
あ、「トロッコ列車」が着く時間になったと、デジタル一眼レフに望遠系ズームレンズを付けて撮影スポットに立っていた。いつまで経っても来やしない。道の駅の女性がやって来て、故障で動かないから来ないかもしれないと教えてくれた。そうなんか、そう言えば、ここに着く途中、変な所で停車中のを見かけたな。

ところで、この植物をご存じの方はあるだろうか。秋になったらもっと大きくなって桃色に熟れていく。ヤマボウシの実なのである。これが私の幼少期のおやつのひとつでもあった訳だ。ほおっておくと、深紅になって落ちていく。・・・今朝、ある女性に「おじいちゃんでしょ」って言われてショックを受けた。若い、青い実を見つめていると、傷ついた心も癒されていく。昨日のことである。
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嬉しい悲しみの涙
2021年08月03日
私は知らなかったが、障がいを持つ息子のために妻が保険をかけていたらしい。そしてどの通帳からか分からないが今も保険料の支払いは続いていた。そのことが先日分かったので入院中の病院に、書類の申請に行った。妻らしいなと、改めて思う。

嬉しいことがあると、当然に嬉しい。喜びが大きいほど心はより楽しくなる。そして私の場合、そのしばらくの後に悲しみがやって来る。妻が聞けば、妻が知ればもっと喜ぶだろうな。そう思った瞬間に悲しみはやって来る。その喜びが大きい程、悲しみは深くなっていく。妙な話だが、先日の夜もそれで泣いた。
私の運転する車の助手席で、私との会話を楽しんでいた妻。私もだが、妻もその時間が一番楽しかったらしい。だから今も、助手席には妻の遺影が座っている。この時間が、私が一番心安らぐ瞬間だ。明日は定休日、サンドイッチ作ってドライブを楽しもうと思っている。在りし日の妻の思い出に、遠慮なく泣こうと思っている。悲しい涙じゃない。二人で暮らした思い出が、限りなく湧き出て来る数々の思い出が、嬉しくて流す涙なのだ。
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間もなく盆なのに
2021年08月02日
国民に協力をって言うけれど、じゃあどうして国民の意見は無視するの。延期、あるいは中止って意見が多かったんじゃないの。なのに、どうしようかっていう協議はなかったよね。開催一点張りだったよね。昨日も、東京の感染者は日曜日なのに3000人を超えた。
昨夜、東京に住む長女と電話で話した。同じく東京に住む、次女と話し合ったと 言う。この盆は帰るの止めようねって結論になったと。また、私はひとりぼっちの盆を迎えねばならない。コロナウイルスが憎い。オリンピック開催が憎い。この怒りを、どこにぶつけたらいいのだろう。
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カフェ 駕籠石庵
2021年07月31日

私が事務所をオープンした当時、借家をひとつ持っているので空室になったらお願いねって、20歳ぐらい年上の女性と知り合いになった。度々訪れてくれて、お客様も紹介していただいたりした。それが結果につながると、老舗「皆美館」のレストランでの昼食もご一緒したりした。私とは気が合う人だった。そして、6年前に他界された。それ以来、その家とは付き合いも途絶えていた。
先日、その方の娘さんの来訪があった。大社町でカフェを開いたという。そして奥さんはって聞かれた。3年前に亡くなってねと答えたら、知らなかったわ、ごめんなさいねと言って御仏前をくださった。有難うございます。一度行きますねと言って、今日、友達を誘って行ってきた。

大社町の、旧JR大社駅の近くにある駕籠石庵は築100年以上の古民家である。敷地面積400坪ほどに、建物が立っている。養蚕農家の旧家だそうだ。座敷のテーブルから望める庭の真ん中には駕籠石が置いてある。駕籠石とは、昔の乗り物の駕籠を置く平たい石のことである。そんなところから、駕籠石庵と名付けられたそうだ。
娘さんのご主人のご実家である。大黒柱や、天井に横たう大きな梁は黒光りしている。松の木の建築材からは松やにが滴って塊を作っている。いかにも名家の佇まいの趣が漂っている。そしてなにやら懐かしい。庭を見せて頂いていると、風に揺らぐ風鈴の音色は涼やかだった。




