2021年03月25日

 

楠 4所帯入りのこの事務所の裏に相当に昔から植わっているだろうクスの木がある。幹回りは大人ひとりでは到底抱えられないほどの大きさだ。時に、雪の重みで枝が折れて落下することはあっても堂々として凛と佇むその姿は神々しくもある。

 

 だが、生への営みは当然のこと。常緑広葉樹だから落葉で丸裸になることはない。黄緑色の新しく芽吹いた葉と紅葉した古い葉とが混在する時期がある。今まさにその時に突入したところだ。年間で、一番生命活動が活発な時なのであろう。

 

 古い葉たちは落葉して春の爽やかな風と戯れる。戯れながら同じ方向へと仲良く移動していく。事務所裏から事務所横を通って事務所前までやって来ては私の事務所前に留まる。移動中の軍隊アリが獲物を見つけた時のように、と言うか私をあざ笑うように。そしてこれから私と彼ら達との長い長い1ヶ月間の格闘の物語が始まるのである。

 

 

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