店主日記
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結婚記念日
2024年05月09日
「母に贈りたい」との妻の提案で、母の日を選んだ。その日は、眩しいほどの陽射しが山々に降り注いでいた。山わらうとはよく言ったものだと、日本語の美しさに感動したことを覚えている。天気までが私たちを祝福してくれている、そう思った。幸せになろうな。指輪を交わす時、目と目で誓い合った。
そして今年の5月8日は定休日と重なった。思い出の鳥取行きはずいぶん以前から決めていた。9時に自宅を出発した。公園墓地に妻を迎えに行った。なぎさ、約束通り迎えに来たよ。お化粧すんだかい。おめかししたのかい。
山陰道を軽快にとばした。淀江インターで一般道の国道9号線に下りた。ここからは思い出の道になってきた。左に見えてきた日本海は荒れていた。波しぶきの水滴が視界を遮っていた。海だって、同じだね。人生と同じだね。晴れた日もあれば、曇った日だってあるんだね。そして今日のような荒天も。
目的の観音院に着いた。参道を歩いた。小雨降る山門下で本堂をしばし見つめていた。なぎさ、今日はやめよう。庭園の鑑賞はよしにしよう。この天気だと、思い出が壊れそうだから。なぎさとドライブしただけで十分だ。隣にいてくれただけで十分だよ。
そしてなぎさ、思い出って、悲しいだけのものじゃあないんだね。今日のような、こんな喜びもあるんだね。でも、涙くんさよならなんて言わないよ。悲しくなったときはいっぱい泣くよ。涙もいっぱい流すからね。だからと言って、雲の上から泣いてる俺を見て心配するんじゃないよ。もう大丈夫だからね。
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水辺二題
2024年05月06日
4日のみどりの日と、5日のこどもの日の二日間を休むことにした。みどりの日には、国道9号線を西に向かって江津市まで行った。江津市の道の駅「サンピコごうつ」で一休みしてから今度は南下して川本町に向かった。途中、悠々と流れる江の川を眺めていると、我が心のちっぽけさが身に染みた。帰りは大森銀山をかすめ、多伎町から9号線に出て帰ると走行距離230キロ。
5日の子供の日にはまず、安来市の道の駅「あらえっさ」に向かった。そこから米子市を通って国道181号線から180号線に乗り替えて日南町に行った。道の駅「にちなん日野川の郷」でしばし休憩の後、道なき山道を超えて奥出雲町に入った。そこは素通りして雲南市に下って小原ダムに行ってみた。写真に豆粒のようにボートをこぐ人々が写っている。満々と湛えられた水に比べ、人間なんてなんてちっちゃな動物なのだろう。私も、その内のひとりなんだと思った。ひとりぼっちで車を走らせていると、いろいろなことを考えてしまう。でも、それが楽しいのだが。
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5月
2024年05月02日
不思議だなあ。山が煙っている。山全体が煙るのじゃあなく、吹き出し口があって、そこから噴き出ているように見える。その煙に向かって望遠ズームレンズを向けてみた。つかみようのない煙はレンズのピントも弾く。手動に替えて僅かの間に3回シャッターを押した。煙の状態は3枚とも全く違う形になっていた。
いつも不思議だなあと思う。雨の日の山間のドライブはいつも不思議だなあと思ってしまう。あちらこちらの山が煙っている。噴火口から出る煙のように見えるのはどうしてだろう。自然て、面白いね。
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ある晴れた日に
2024年04月30日
よく晴れていた。左手に日本海を見て、ホライゾンは軽快に走っていた。ちょっと休憩しよう、ってことになり、国道9号線脇の駐車場に車を停めた。ここは鳥取の白兎海岸。案内板に、ハマナスの自生地とあった。行ってみると、何株かにハマナスの花を付けていた。妻がいて、まだ幼かった子供たち3人がいた。妻の実家への里帰りの途中のことだ。活気に満ちていたあの時の記憶が、5月の連休が近づくと鮮やかに蘇ってくる。
ホライゾンとは、いすゞがこしらえた本格SUV車でビッグホーンのことである。それをホンダが販売し、ホライゾンと名付けていた。ボディ両サイドにHORAIZONと大きな字がアクセントで派手過ぎかなと思ったが、値引きしますよと言うのでキャンプ好きの私が飛びついた。17年間の我が家の愛車だったのである。気に入っていた。
写真のシャガは、本文とは全く関係ない。先日、八雲町の熊野方面を車で走っていたらあちらこちらに群生を見つけた。このシャガの花、原産地は中国らしい。いわゆる帰化植物だ。日本には、ずいぶんと昔からあるらしい。実を付けず、根を張って株が増えていくらしい。人が関わらない限り移動は不可能な植物なのである。東出雲町の畑地区でもこの群生を見かけた。
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ツツジ
2024年04月28日
ある年の暮れの12月4日、この事務所の開業に至った。年が明けて5月の連休になった。その年は連休も休まず、事務所を開けて営業した。連休には誰も訪れるはずもないのだが、営業を続けた。事務所前の県道の、車道と歩道の間の植え込みに植えられたツツジの花が満開になっていた。
温暖化により、開花時期は早くなっていった。今年は少しずれこんで満開になった。20年前より少し早く、例年より少し遅く満開になった。よく見ると、ミツバチらしい動物が花の蜜を吸っている。こんな所にも、生命の躍動が。そう思うと、ここで頑張った20年が愛おしくなってきた。
20年の月日は、我が家の生活もすっかり変えてしまった。6年前に妻がひとり旅立って行った。5年前、二人の娘がそれぞれの人生に向かって羽ばたいていった。家に残ったのは私ひとりになった。この頃思う。私は妻とふたりで生きているんだと。私の心に、私の身体に妻は宿っている。だからいつもふたりなんだよって、そう思うようになった。