店主日記
-
続おもかげ
2023年06月17日
午前中「おもかげ」を書いた。午後になって、これも書きたいと思った。書きたくてしょうがないなと思った。だから、続おもかげを書いてみる。
私のあの病院への入院は3回目だった。病気で倒れたのが最初の入院だ。雲南市で倒れて、すぐ近くの病院へ救急車で搬送された。だが、ひと晩で便利の良い松江市のこの病院に転院した。そしてやがて、不可能だった心臓の手術が可能になって2回目の入院。2回目の手術の時で3回目。おもかげでの私の話は2回目の手術の時の話である。
3回目の入院ともなると、看護師さんと顔見知りになる。顔見知りどころか、良き友となる。入院患者として、私は優等生だったのだろう、看護師さんたちに好かれていた気がしていた。我が儘は言わなかった。程よい冗談も言った。それよりも、話題が豊富だったからだろう、そう思っていた。
5日間の集中治療室の治療が終わって、いつもの入院病棟に帰ることになった。点滴のまま、集中治療室の看護師さんがベッドを転がしてくれた。入院病棟の担当の看護師さんに引き継いだ時、担当の彼女はにこっと笑って「お帰り」と言ってくれた。近くにいた清掃担当の年配の女性は「娑婆へ帰れてよかったね」と言ってくれた。また、ある若い看護師さんは私の顔を見るなり、「良かったね」と言って目に涙を浮かべてくれた。生きている、そう感じた瞬間だった。
-
涙
2023年06月15日
「亡き妻思い涙のお好み焼き」。山陰中央新報の読者欄「こだま」に、先々月掲載された私の投稿だ。40代の前半から始めた私の投稿、今まで何十回掲載されたのだろう。その中の最高傑作が、そしてよどみなく、完璧に私の気持ちを伝えられた投稿文が、この涙のお好み焼きなんだと思った。
掲載の後、夕食が終わってリビングのソファーでくつろぐ時、幾度かこれを読み返してみている。その度に、実によく書かれていると思った。だからかもしれない。読み終わると、涙が両方の頬を伝って落ちていく。子供の頃、喧嘩に負けて流した涙は辛かったのに、この涙は甘い香りがする。
そして、見るでもなくぼんやりとテレビを眺めていた。どうしてだろう、いつまで経ってもテレビの画面がぼやけている。今日はどうしたことなんだろう。いつまでもいつまでも頬をつたって涙がこぼれていく。もう、泣くほどの悲しみは去っていったのに。その悲しみは思い出に変わったのに今日はどうしたことなんだろう。
-
ロングドライブ
2023年06月14日
朝の8時過ぎ、駐車場前で保育所経由で仕事に向かう近所のお母さんに出会った。やあお早う。4歳の子供さんと手の平タッチ。会えばいつものこと。長距離ドライブしてくるって話したら「行き先は?」。答えは宛なし。気を付けて行ってらっしゃいと見送りの声。
大庭町の公園墓地から宍道湖に沿って走る国道9号線に出た。ETCカードを念のために差し込む。だが、一般道ばかりで鳥取を目指す。後は鳥取に着いてから考えよう。左手に見慣れた日本海。スピーカーから流れる「岬めぐり」。何回も何回も繰り返し聴く。
鳥取市街地は素通りした。国道29号線を若桜町に向かう。道の駅「若桜」の駐車場でしばし考えて道順を決定。戸倉峠を越えて兵庫県に入り、山崎インターから中国道を西に。岡山県の落合ジャンクションから米子道を経て山陰道で帰ってきた。全走行距離380キロ。
さすがに疲れた。特に高速道に入ってから走りっぱなし。途中、トイレ休憩1回だけ。夕食はコンビニで牛丼を買った。野菜補給にキャベツとニンジンとタマネギのスライス。レタスをちぎってトマト二切れ。今朝は連休2日目。早朝に大粒の雨音で目覚めた。良かった。昨日あんなに走れて。
-
あんたあほやなー
2023年06月12日
一昨日、仕事の合間に家庭、いや、私個人用の食料の買い物をした。冷やすべきものは事務所の冷蔵庫に入れた。そうしたことをすっかり忘れていて、持ち帰ることが出来なかった。家に帰って気が付いて、しまったなあと思った。でも、明日でいいか。
昨日の夕方、事務所の冷蔵庫に入れておいたものを取り出した。いつもの買い物袋に入れて、応接のテーブルの上に置いた。戸締りやらを確認して、車に乗って帰宅の途に就いた。もう少しで自宅。あ、しまった。また忘れた。引き返さねば。「あんたあほやなー」・・・車の中で、笑いながら言う妻の声がはっきりと聞こえた。
-
手紙
2023年06月11日
確認したいことがあったので朝一番で安来市の広瀬町に向かった。終わって帰り道、右手に大山が見えた。曇り空だったので山肌は見えなかった。ただその輪郭はくっきりと見えた。これから伸びようとする田んぼの稲の生命力。凛とした民家の赤瓦。そして堂々と大山の雄姿
松江市に帰った。車は国道9号線近くにある東出雲町の黄泉平坂付近を走った。黄泉平坂とは、日本神話において生者が住む現世と死者が住む他界との境目にある坂を言う。昨年の今頃、ここへ娘を連れて来たことがある。娘はすやすやと眠る孫と車の中にいた。
なんなのっていぶかる娘に説明した。東出雲町の商工会がね、ここへ投函した手紙を天国に届けてくれるそうだ。お父さんも投函してきたの。そうだ、今投函してきた。そして投函した手紙のコピーを娘に見せた。「お父さん、お母さんのことこんなに好きだったんだ」