店主日記

  • 甲斐性なし 2023年06月29日

     出雲市の病院に入院中の息子に会ってきた。息子、昨日は機嫌が悪かった。親父、お前が甲斐性無しだから俺がこうしてこんな所に閉じ込められているんだ。そう言っていたみたいだった。そうだよな、俺が悪いんだよな。そう思ったらハンドル握る心が辛かった。

     

    雲

     

     道の駅「キララ多伎」に着く頃には雨も上がった。でもまだ梅雨空が広がっていた。日本海を眺めた。出雲大社付近に横に長い雲が海面すれすれに漂っていた。何度、この道の駅から日本海を眺めたのだろう。疲れた心を癒すのにはいい風景だ。心洗われた。

     

     息子が小さい頃、ここ三瓶山の西の原で遊んだ。妻と息子と、そして私と3人で遊んだ。自閉症の息子、まだ歩行も頼りないのに原っぱをひとりで歩いていった。どこまでもどこまでも進んでいった。連れ戻してもまたさ迷っていった。懐かしい、懐かしすぎる昔の思い出だ。

    山並み

     

     麓で仕入れたあんパンを駐車場の車の中で食べた。少し向こうに若いカップルが写真を撮り合っていた。それを見ていても、思い出と重なっていって私の瞼を濡らしていった。風景がだんだん霞んでいった。若い二人の姿もべス単レンズの中にいた。だけど、その瞬間は決して不幸ではなかった。

     

     いつものように雲南市の頓原に下ろうと思った。その前に東の原に行ってみることにした。スキー場をバックに彼方の山々を眺めてみた。上空は風が強いのだろう、雲が早いスピードで流れていた。ここに、何度カメラを向けたのだろう。四季折々の風景は私の心を癒してくれた。

  • ヤマボウシ 2023年06月25日

     先日行った奥出雲おろちループ道の駅にヤマボウシの花が咲いていた。真っ白いヤマボウシの花は、実を付けて散る前に赤くなっていくらしい。花は散っても実をつけるから、散る前兆があってもいいのかもしれない。人の命はそうはいかないな。

     

    ヤマボウシ

     

     一昨日、午前中に空室の写真撮影を終えて帰ってきたら先生がいた。先生と言ったら、この前クリスマスローズを見に行った時の先生だ。私の中学校の3年間の担任である。良いタイミングで帰ったものだ。会えて良かった。

     

     先生85歳。会話が人の寿命の話になってきた。お互いに違和感がないというのもおもしろい気がした。どうやら私の事務所は、先生を含む私たち同窓会の中継点らしい。忙しい仕事じゃあないから、途切れなく来客のある事務所じゃないから、それもいいのかもしれない。時々やって来る同級生たちの顔を見るのが楽しみだ。

  • 私は子羊 2023年06月22日

     横田の町のコンビニでサンドイッチを買った。そのままおろちループ道の駅の駐車場に車を停めた。どうやら店は休みらしい。駐車場も閑散としていた。この方がいい、落ち着くから。食欲はないがサンドイッチをかじった。飲み物のコーヒーはポットに入れて持って来た。駐車場脇の植え込みに黄色い花が雨に濡れて咲いていた。

     

    黄色い花

     

     いちばんの目的の先祖のお墓にお参りした。その後、吉田町に抜けてみることにした。道路標識だけでコースを選ぶ。初めて走る道だった。車がやっと通れるほどのくねった狭い道。ステレオのボリュームを上げた。ハンドルを握る手も緊張した。だが、この方がいい。かえって思考に集中できる。

     

     そしてやっと心は決まった。暗かった長い長いトンネルをやっと抜けれそうな気がした。悲しくて、寂しくて辛い5年間だった。人間は、いつまで経っても迷える子羊であるらしい。・・・今朝早く目が覚めた。早くに出勤して営業時間までに空室の写真撮影。流した上半身の汗を濡れタオルで拭いた。ああ、気持ちがいい。

  • 五月晴れ 2023年06月19日

     テレビを付けて朝食を摂っていた。女性アナウンサーが言うには、今日は五月晴れなんだと。え、いや今6月でしょ‼と思った。彼女の説明では、旧暦では今頃が5月なんだとか。それは知ってるけど、普通、5月の爽やかに晴れ渡ったそんな時を五月晴れと言うんじゃないの?

     

    五月晴れ

     

     旧暦の頃の五月晴れとは、梅雨の晴れ間のことを言うらしい。・・・明治の末までは旧暦が使われていた。時代も、大正になって昭和に変わった。新暦に皆が親しみだした頃、五月晴れの意味も変わっていったのだろう。1993年に編纂された国語辞典には、両方の意味が書かれていた。

     

     旧暦と言えば私が子供の頃、正月が2度あった。新暦と旧暦の正月だ。旧暦の正月には、以前の住所で言うと仁多郡仁多町三成、その町の路上にたくさんの魚のブリが並んだ。ブリ市と言っていた。各家庭が1本ずつ買って帰って刺身にして食べた。余ったブリは裏庭の雪の中。冷蔵庫がない時代、根雪の中は天然のチルド室だった。

     

     さっき、お昼のおにぎりを買いにいつものコンビニに行った。いつもの中年の、いや失礼。でも少女じゃないし青年でもないし。でも中年と言うには失礼だな。その人に言ってみた。今日は五月晴れだって。え、6月なのに。誰もそう思うよね。

  • おもかげ 2023年06月17日

     先日買ってきた文庫本、浅田次郎の「おもかげ」を読み始めた。まだ読み始めたばかりなのでストーリーは分からない。定年退職でお別れの会を開いてもらった主人公。その帰りに電車内で倒れた。救急車で運ばれ、そして救急病院の集中治療室に入って意識がないまま3日目の夜がやって来た。

     

     私は集中治療室で5日間過ごしたことがある。初日の朝、心臓手術の全身麻酔で瞬時に眠った。夕方目覚めた時、最初に目にとまったのが妻の顔だった。え、何をそんなに心配そうにしている。どうしたって聞いたら、ここは集中治療室だよって答えた。手術が順調ではなかったらしい。

     

    種 その夜、心臓の脈が時々1分間に150回を超えた。緊急ブザーが鳴る。その度に看護師さんが飛んでやって来る。今、150回を超えたんだよ、大丈夫?って。共振というのだろうか脈拍の振動が伝わって眠っているベッドを揺らす。そんなばかな、看護師さん地震なんですかと問うてみた。

     

     今朝、ブログのネタの写真をと思って事務所のまわりをひと歩きした。先日、花期が終わった茎を切り離したアマリリス。おや、種ができてふくらんでいる。切り離して何日経つのだろう。切り離されてもまだ種を付けるなんて、すごいなあ。そう言えば、私もまだ生きているんだ。こんなに元気になって。

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