黄金に輝いた

2023年08月22日

 子供の頃、私は決して丈夫な子、とは言えなかった。体は小さく、そして内気な子供、そう言われて育った。だから家庭訪問の日がいやでいやでたまらなかった。内気なんです。声が小さいです。手も上げないんです。毎年、同じことを言って先生は帰って行った。

草

 

 いつのことだったか、天気がいい暑い日だった。両親が山へ木を伐りに行くと言うのについて行った。炭焼きに使う木を伐りにである。あたりには、笹が生い茂っていた。暑かったせいか、気分が悪くなってきた。いつもの貧血なのだと思った。そのせいか、生い茂った笹の葉が太陽の光を浴びて金色に輝いて見えた。黄金の中に私は立ち尽くしていた。そして耐えきれず、うずくまったまま意識を失ってしまった。

 

 朝の事務所の鍵を開けた時、朝日に照らされた事務所は熱気に包まれていた。窓をすべて開け放ち扇風機を強にした。しばらく空気を入れ替えて、エアコンのスイッチを入れた。玄関の向こうを見ると、県道の中央分離帯に生えている草が、朝日に輝いて金色に見えた。そして、黄金に輝いていた笹の葉の、あの日の記憶が蘇ってきた。

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