店主日記

  • やまさんの写真展 2023年10月02日

     頬ずりした墓石が夜露に濡れていた。あたりの叢はそれぞれの葉が夜露の粒に空の光を弾いて光っていた。朝8時過ぎの妻の墓所は陽だまりになっていた。しゃがんで妻に話しかけた時、背中に当たる陽の光の暖かさが気持ち良かった。今日はそんな爽やかな朝を迎えた。

     

     三沢の町に一つの神社がある。秋の例祭には相撲大会が行われていた。仁多町は昔から相撲が盛んな地なのである。その日、男の子全員がまわしを締め、小さな力士になって学校から神社にある土俵に出かけて行った。ある年、私の対戦相手はこの写真の主、山さんだった。半分自信があったが、いざ取り組んだら軽々と腰に乗っけられて背中から土俵にたたきつけられた。こんなに豪快に勝負がついたのは、私にもそれなりの強さがあったからだと自分を慰めた。悔しい思い出だ。

     

    山さん1

     

     先日の同窓会に集まった仲間、それぞれにある種の病を友にしている。この年齢になれば当たり前のことだ。その山さんが言った。俺もお前の仲間入りしたよって。だから、これで、病院に行かないだけだがと、元気げにするひとりを除いてみんな病と友達になった訳だ。

     

    山さん2

     

     病の話が当然に話題となる。そんな時、病、と言うより年齢には勝てないなと思っている先生が言った。とよみつ君は長生きするよ、と。自分でも本当のところは分からないが、長生きしたいと思う私もいる。だが、生きるより早く妻の所に行きたいなと、そう思う私もいる。だけど、先生の言葉は嬉しかった。全国の49の蜂の仲間へ、そして天国に行った仲間へ。また近況報告するな。

     

     写真は、山さんの三沢の生家で山さんが中秋の名月を撮ったもの。

     

     今日は3日。昨夕、山さんからのメールを見た。あの神社相撲、あれは俺の勇み足だったからお前の勝ちだよ。行事が見ていなかっただけだと。だけど、それにしても、あれは技で負けたんだ。相撲に負けたんだ。私の惨敗だったことには間違いない。やはり悔しい。勉学に負けるのは悔しくないが、スポーツに負けるのは悔しい私なのである。

  • 同窓会 2023年10月01日

     午前中はあんなに天気が良かったのに、午後になったら雨が降ってきた。天気予報は良く当たる。ポロシャツ一枚では肌寒い。ジーパンに履き替えて半袖Tシャツの上に格子模様の黒っぽいシャツを羽織った。ボタンは留めない。その上に全財産入りのリュックを背負った。これが私の普段着スタイルだ。すべてがよれよれだから、これでホテルのロビーに行ったりすると受付カウンターからいぶかしがられたりする。

    デザート

     

     傘を差してバス停に向かって歩き始めた。何もこの日に限って降らなくてもいいだろうに。雨はその強さを増していく。バス停にやって来たバス、乗車口が開かない。運転手が下りてきて開錠センサーをタオルで拭いた。ドアが開いた。センサーが感知しないほどに強い降りだったのである。

     

     30分後、「いと賀」に到着した。大女将が出迎えてくれた。先生も、ヒーちゃんも、山さんももう来ているらしい。これで4人がそろった。あと一人。これが仁多町立三沢中学校第18期生の松江メンバーだ。開催ちょうどの時間に、よっちゃんが到着した。乾杯の後、お互いの体調説明から同窓会は始まった。

     

     写真は締めのデザートだ。この日の昨日の、中秋の名月になぞらえてひとつひとつの品が丸くこしらえてあった。乙なって、こんな時に言うのだろうな。

  • 九月の雨 2023年09月30日

     朝から体がだるくて、パソコンのYouTubeで太田裕実が歌う「九月の雨」を何となく聴いていた。そう言えば、9月も今日が最後の日だ。だけどどうしてこうも体がだるいのだろう。昨夜あんなにぐっすりと眠ったのに。え、この肩の違和感は?・・あ、そうか。昨日の午後、コロナワクチン接種したんだ。

     

     今晩は、久し振りに同窓会がある。仁多町立三沢中学校卒業の、松江市に住む僅かのメンバーの同窓会が伊勢宮町の日本料理店、「いと賀」で開催される。この春、出雲市の佐田町にクリスマスローズを見に行った、あの見学会を開催した先生もやって来る。5時に仕事終えて、一度車を持って家へ帰ろう。そして、ジーパンに履き替えてバスに乗って行こう。楽しみだな。

     

     さっき、早い昼ご飯を食べた。ご飯と言っても、玉子サンドである。昨夜、ゆで卵で作っておいた。卵の他に何挟もうかと悩んだ時思い付いた。タマネギのスライスを入れてみよう。そしてさっき、いける。タマネギの辛さと甘さが何とも言えないいい味を出してくれている。大人の味だ。

  • マツムシソウ 2023年09月29日

     先日、午前中に散髪をした。午後の取引の交渉に向かうのに気合を入れるためである。その交渉をある程度進めることができた。その疲れか、今朝は7時半までぐっすりと眠った。そして今朝、昨日の仕事の興奮が冷めやらない気がして車で走ることにした。

     

    マツムシソウ

     

     八雲町から広瀬町に下りて行った。道の傍らの所々に彼岸花の集団ががあった。きれいに草刈りされた川土手にのんびりと咲く花。荒れた草むらの中にやっと顔を出して窮屈そうに咲く花。ひとりぼっちで寂しそうに咲く花。彼岸花の一生も、人の一生と同じだなと思った。それぞれの人生があるのだなと思った。

     

     そして思った。ひとりになって5年が経った。何とかいろいろな面で無事暮らしている。これもみんな、空の上から見守ってくれている妻のおかげだなと思った。なぎさ、有難う。これからも頼む。でも、無理しない程度にね。気楽でいいよ。・・・かあちゃんの詩日記にそう書いておいた。

  • 約束だったからね 2023年09月28日

     昨日の定休日、お客様の朝の引っ越しのお手伝いを1時間で終え、三瓶山に向かった。墓前で、今日は雨が降りそうだから無理しなくてもいいよって妻が言う。いや、約束だから。雨の日のドライブも俺好きなんだ。今日は楽しもうよ。

     

     国道9号線を西に向かっていたら降り出してきた。でも、小降り。そして出雲市に着いたら本降りになってきた。それもつかの間、長めの間欠ワイパーがちょうどよい。あのアランドロンの映画のフランスの名車、シトロエンのワイパーの音を思い出した。

    三瓶の霧

     

     大田市街地から大田高校の前を通って、いつもの北の原に向かうコースを走った。その中腹あたりから霧が出てきた。その霧は濃くなったり晴れたりしていた。時には視界を遮るほどの深い所もあった。その霧が風によって川のように流れている山肌もあった。なんて幻想的なんだろう、そう思った。

     

     西の原に着いたら薄曇り、だが山の頂は霧で隠れていた。いつもの駐車場でコンビニで買ってきたクリームパンをかじった。私の車の斜め前の駐車の列に広島ナンバーの車が止まった。私ぐらいの年格好の男性がひとり、山の写真を写していた。彼もやもめなんだろうか。過去の記憶が、走馬灯のように心の中を巡っていった。

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