店主日記
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アマリリスが咲いた。
2025年05月20日
アマリリスの花が咲いたよ。今年もあのアマリリスが咲いたよ。俺たちの半生を、俺たちの事務所の歴史のすべてを知っているあのアマリリスの花が咲いたよ。今年もあの深紅の花を咲かせたよ。嬉しい。嬉しい気持ちが胸いっぱいに広がって来る。心がほんわかとしてくる。先に天国に逝ってしまった君は、花園とやらの中で楽しく暮らしているのだろうか。君よりもっと先に逝った君のお父さんやお母さんと一緒に暮らしているのだろうか。ひょっとしたらおじいちゃんもおばあちゃんも、そのまたお父さんもお母さんも一緒に暮らしているのだろうか。そしてたまに外出してくるよと言って、あの大空を吹きわたって私のことや子供たちのことを心配しているのだろうか。
そんな暮らししていたらいいな。俺は毎日毎日君のことを想い続けている。朝は台所で涙し、昼は事務所でなぎさって何度も何度も呼びかけて、夜は洗濯干しながら君に囁きかける。地上の苦労は任せとき。息子のことも任せとき。アマリリスもきっと、励ましてくれるから。
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カエルの歌が聞こえた。
2025年05月17日
昨日の朝、早く目が覚めて以降眠れなくなった。疲れているのだから眠らせてと、心の中で悲痛な声を上げる。が、虚しさに変わった。今朝も何度か早く目が覚めた。だがもう一度目をつむったら眠れた。疲れすぎると眠れない。徐々に回復して眠れるようになる、そんなことを悟った。悟るそんな歳になったのだろう。
晴れるのかなあと定時に朝の事務所に着いた。のぼり旗立てようとしたらザアッと降ってきた。その雨につられて1匹のカエルがツツジの植え込みの中で鳴いた。どうしてこんな所に、と不思議に思った。でも生きている。しっかりと鳴き声立てて。この頃思う。生命に付いてよく考える。先日、安来市の清水寺を散策していて境内の傍らにシャガの花を見つけた。昨年だったか一昨年だったか、八雲町に咲くシャガの花の写真をこの店主日記に掲載した。この花は中国原産の帰化植物らしい。でも山野草に間違いない。私が、園芸種よりもひっそり咲く山野草に興味を持つのは、どうやら母の影響らしい。
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中国やまなみ街道
2025年05月16日
昨日、お客様との打ち合わせのために広島県に向かった。いつもの出勤時間の1時間余り前に事務所を出発した。三刀屋町で尾道松江線に合流し、後は一直線だ。平日の朝とあって、行き交う車は少ない。スピードメーターの誤差を考えて、スピード違反で取り締まれぬほどの制限時速を多少オーバーしたスピードで走った。車の進行は快調だった。
約束の時間の30分前に指示された尾道市の道の駅「クロスロードみつき」に着いた。おや、ここは以前1回ほど訪れたことがある。はて、いつだったか。だれか隣の助手席に座っていた記憶があった。尾道に住んでいた娘ではない。もっとそれ以前の記憶だ。それ以前の記憶と言ったら。
あの時だ。まだ尾道松江線が全線開通していない時、妻とふたりで尾道観光にやって来たんだ。帰り、道の駅があるよ、寄ってみようよということになった。そうだ、あの時の記憶だ。あの時の記憶が蘇ってきた。尾道の港町で尾道ラーメンを妻とふたりで食べたんだ。その時を回想しながらひとり道の駅に佇んでいた。しばらくして駐車場に入ってきた車の中で中年の男性が手を振っていた。
尾道市から四国の今治に向かう有料道路を「しまなみ海道」という。尾道松江線を「やまなみ街道」という。打ち合わせ終わってやまなみ街道を帰路に着いた。道の駅「高尾」を過ぎたあたりから急に疲れを感じた。出張して今日は何日目なんだだろう、疲れはそんな錯覚をもたらした。いやいや、今朝出発したんだろ。
遊びの時は疲れなど感じない。帰りはいつも満足感に浸るのだが今日は違った。家に帰ってシャワーを浴びるのがやっとだった。夕ご飯を食べるのがやっとだった。焼酎のお湯割りが身にも心にも染みた。仕事に緊張するか、あるいは楽しむかによって、体や心に受ける影響は全く別のものらしい。
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清水寺
2025年05月13日
今日の火曜日と明日の水曜日は月一回の連休だ。昨夜の天気予報で今日は午前中家にいようと決めた。目が覚めると爽やかに晴れ渡っていた。早速布団を天日干しした。シーツを洗濯機で洗った。久し振りにこんな作業をする。衛生的にも良くないと思うのだが、男やもめにウジが湧く。
3時間半、昼になって布団は取り込んだ。どこかに行ってみよう。明るい昼間は心も現実的だ。我が家は、妻の思い出が多すぎる。思い出が強すぎる。思い出が深すぎる。だから寂しくなる。と、いたたまれないから昼間は外出することにしている。夜になると心も別の動きをするらしい。とばりがそうさせるのかもしれない。我が家は安らぎの場所に変わる。そんな訳で安来市の清水寺に行くことにした。信心がある訳ではないが、あの雰囲気が好きなのだ。だから神社仏閣には好んで行く。駐車場からほんの少し歩いたところにアジサイの木が数本あった。後いくつ日にちを重ねたら花になるのだろう。精進料理店の建物の前に新緑のモミジが青空に映えて美しかった。参道ですれ違う年配の女性が会釈をくれた。
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ただただまいったまいった美保関
2025年05月11日
昨日の強風で事務所周辺が荒れた。今朝出勤してきてひどいと思った。クスノキの葉っぱと、松の茶色い雄花が散らばっていた。交差点の歩道までも汚していた。早くきれいにしたいと思った。9時から始めて、休み休みだったのでその作業は午前中を要した。
こんな非日常的なことをする時には妻の顔が浮かんでくる。妻の声が聞こえてくる。「ええ加減でええんちゃう」と言っている妻の声が聞こえてくる。そしてふと、現実の我に帰って考え込んでしまう。どうして私はこんな運命なんだろう。楽しかったのに、これから良い人生がとそう思った矢先だった。どうして私はこんなに寂しいのだろう。だが懸命に耐えようとしていた。頑張ろうとしていた。負けちゃあいけない、そう思って生きてきた。そんな私が今朝の作業で思ったことがある。そうだよな、「ええ加減でええんちゃう」だよな。今からは、愁いをぷんぷんさせて生きていく。堂々と、愁いをぷんぷん匂わせて生きていく。もう、頑張ろうと思わない。




