息子よ

2023年10月25日

 定休日なので出雲市の息子に会いに行った。手を差し出したら握ってきた。いつまでもいつまでも離そうとしない。いつもこんなことないのに。連れて帰ってくれって、目が訴えていた。新しい入所先に申し込んでから、もう5年半にもなるのに。空きがなくて、いつまでも退院できないでいる。手を引き離したら、うつむいてしまった。

 

 辛かった。そんな息子を見るのが辛かった。苦しかった。無力な私が情けなかった。別れてひとり、エレベーターに乗った。誰もいないエレベーターの中で、手すりを握った瞬間泣き崩れてしまった。なぎさ、俺どうすればいい。

 

川

 

 立久恵狭を通って帰ろうと思った。峠を越して、息子が入所していた施設前に出た。妻が、息子と一緒に何十回もこの車で走ったこの道を帰ることにした。CDでグレープの歌声を繰り返し繰り返し聴いた。店主日記、誰か私の気持ちを分かってくれる人がいるのに違いない。そう思いながら車を走らせた。立久恵狭、川なのに水の流れはたゆとうていた。

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