飛び散る波しぶき

2026年04月20日

 二人の住まいは遠距離だったので文通での交際だった。知り合って半年余り経った頃だろうか、もう一度会おうということになり、約束をした。会う場所はふたりが住む中間地点、鳥取市と決めた。私は3時間近くかけ、車で向かった。鳥取駅の階段を、改札口に向かって降りてくるだろう彼女を緊張しながら待った。

 

 当時、鳥取市について無知だった。どこへ行く当てもない。とにかく車に乗り込んで走り出した。すると、妙に路上に建つ賀露港の案内板が気になりだしてハンドルを向けた。人っ子一人見当たらない閑散とした漁港だった。冬の荒波が防波堤に砕かれて空に飛び散っていた。白波が太陽の光を弾いて美しかった。

 

 先日来、命日は妻との思い出と過ごすためにどこに行こうかと迷っていた。出雲大社か鳥取市かと迷って結論は定まらなかった。だが昨日、突然賀露港の防波堤に砕かれて飛び散る波しぶきの記憶が鮮やかに蘇ってきた。そうだ、23日の妻の命日は賀露港に行こう。

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