舌震の恋吊橋
2024年09月11日
今電話待ちを事務所でしている。外は相変わらず暑い。湿った空気が肌にまとわりつくような、そんな不快な暑さだ。定休日だから仕事をする気はない。外をぼんやり眺めていたら雨が降ってきた。そして晴れてきた。私が子供の頃の母は、この状態を狐の祝言だと言っていた。懐かしい。
そんな子供の頃、よくここ「鬼の舌震」で遊んだ。我が生家から、子供の足でここまで歩いて1時間弱。あの頃は、水面から1.5メートルの高さに吊橋があった。その吊橋から飛び込んで泳いでいた。あっという間に、唇の色が紫になって行った。太陽の光に焼けた岩肌で、体を温めた。懐かしい思い出のひとつだ。
今その吊橋はなくなって、それから何代目だろう。遥か高く、恋吊橋が出来上がった。その真ん中で下を見ると、泳いでいたダム湖も、流れてきた砂にうもれていた。昔の面影はなくなっていた。あの頃を思い出して懐かしんでいたら、人がひとりこの橋を渡ってきた。その一歩一歩に呼応して、わずかだが微妙に橋が揺れた。昔、妻を恋した時の心の揺れのように。
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