またな・・・

2023年09月23日

 見送り展望デッキから、東京行きの飛行機がすぐそこに見えた。搭乗通路に、ひとつだけ小さな窓がこしらえてあった。そこを見ていると、乗り込んでいく人々がちらりと見えていた。私は目を凝らして見ていた。あ、通った。娘が孫を抱っこして行く横顔がちらりと見えた。あ、っと思わず声を出してしまった。

 

東京行き

 

 ジェットエンジンのうなりを高めて、間もなく飛行機は滑走路へ入り、ゆっくりと西へと進んでいった。そしてユータンして宍道湖目指して加速していった。やがて前輪を浮かせ、上空へと飛び立っていって、その姿はだんだん小さくなっていった。やがて視界から消えようとしたその瞬間、太陽の光を弾いてキラリと光った。見えぬ機影を、私はいつまでもいつまでも追い続けていた。

 

 僅か一週間だけの暮らしだったのに、それが思い出となって蘇ってきた。孫の笑顔がまぶたに浮かんだ。娘の笑い声が耳元に蘇ってきた。行ってしまうんだな。今度いつ会えるだろう。またな、また会おうな。達者で暮らせ。

 

 ひとりでの帰り道、グレープが歌う精霊流しをCDで聴いた。無縁坂を聴いた。縁切寺を聴いた。こんな気持ちの日には、グレープの歌声が良く似合う。ボリュームを上げて何回も何回も繰り返し聴いた。歌ってみたが、声は途切れて、また途切れてしまった。

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