一期一会
2022年03月09日
テーブルの上に紅茶とケーキが置いてあっても、面と向かって二人で話すのは遠慮がちなものだ。その点、運転席と助手席の二人が話すのは気ままである。流れゆく風景に半分心奪われる気楽さからだろうか。目と目を合わせずとも、小声で聞こえる程度に体の位置が近いせいだからだろうか。腹を割って話せる瞬間でもある。だから私は、心許せる人をドライブに誘うのが好きなのである。
昨日は娘を連れて三瓶山に行った。三瓶が好きだった妻との思い出を話して聞かせながら車を走らせた。北の原に着いた時、ここで、ふたりで三瓶バーガーを食べたんだ。今日それを食べようなって店を見ればCLOSEDの看板。・・・両サイドにうず高く寄せられた雪の塊の中の道を走って頓原道の駅のレストランで遅い昼食を摂った。
今まで、二人との会話の中には妻がいた。それぞれの心の通訳に妻がいた。それで良かったのだけれど今は違う。今まで話せなかったこと。これからも話せないだろうこと。だから今話すんだ。私の気持ち、娘の思い。今しかないんだからって、そんな心で車を走らせた。
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