セミ

2020年08月05日

セミ

 庭の桜の木にとまって鳴くアブラゼミを素手で捕まえようとする時、「盆さんが近いけん捕っちゃいけん」と母に叱られた。なんでって聞くと、「ご先祖さんかもしれんけん」って言う。そんな非科学的な、と思う私ではあった。

 

 男やもめにウジがわくって昔の人は言っていた。そうだなって今思う。でも、たまには布団だって干すし、シーツだって洗う。今朝も洗ったシーツをベランダに干した。するといっぴきのアブラゼミがやって来た。竿で半分に折れた半分の一面をゆっくりと歩いている。

 

 え、かあちゃんなのだろうかって思う。懐かしそうに、そして愛おしそうにシーツにつかまって歩いている。いつまでもいつまでもゆっくりとゆっくりと歩いている。かあちゃんだ。そうに違いないと思った。だって、逝ってしまう前の晩まで一緒に寝ていたダブルの布団カバーだもの。 

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