ロミオとジェリエット

2025年08月28日

 昨日の朝は雨が降っていた。先日頃から、早朝の墓参に行くと、妻の墓石のまわりの草むらに朝露が光るようになってきた。後ろの森ではヒグラシが盛んに鳴いている。今朝は4時にエアコンを消して窓を全開にした。暑い暑いと言っても秋は確実にやって来ている。それにしても、秋という季節は、なぜこうももの悲しくなるのだろう。

 

 昨日は週一回の食料品の買い出しの水曜日だった。これだけ野菜と肉があれば十分と、いつものレジに向かった。あれ、様子が違う。セルフレジになっている。いつもの彼女が傍に居たので、セルフレジの打ち方を教えてもらった。終わって、じゃあと帰りかけたら、「今日は通院日だったの?」。腕に貼った、採決の注射の針の跡の血止めのテープをそれとなく見たらしい。そんな何でもないことに、優しく触れてくれる人なんか他に居りゃあしない。

 

嫁ヶ島 買ってきた食材を冷蔵庫に納めていたら、急に寂しくなってきた。もう、彼女には会えないのだろうか。そう思った。レジで、二言三言、声を交わすだけでいい。それ以上は何も望まないのに。彼女と会うと、誰とも会わない定休日の寂しさが和らいでいたのに、会えないと思うと寂しい気持ちが胸に広がっていった。最初彼女を見た時、妙に懐かしく感じ、そして思い切って声をかけたのがきっかけだった。同郷の、ふる里言葉とそのイントネーションが懐かしかった。

 

 ロミオとジュリエットの物語を思い出した。そして、妻が静かに息を引き取っていったあの瞬間の記憶が蘇ってきた。最愛の人を早くに失った私は、人と人の別れについては心が大きく動く。交通事故で亡くなった人のニュースを聞いては、その家族を想い、涙を流す。エレベーターの中で何も関係ない男性に殺された女性本人の無念、そしてご家族の哀しみと苦しみを思うと、強く辛い気持ちになっていく。

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