奥出雲・八重垣神社

2024年06月06日

 駐車場に車を停めると、突然、石階段が風景を覆ってしまう。よし、と覚悟を決めた。神社までの半分ほど進んだ所で一休み。なんと衰えたことか。若い頃にはあんなに山歩きが好きだったのに。休みの度に、三脚持って山を歩いたのにこの様は何だろう。

 

八重垣神社

 

 八重垣神社は、伊賀武神社と同じ敷地内に建てられている。間借りのようなものだ。もともとは違った所にあったのだう。ここから車で1分の所に鏡の池があるのを見ても、あのあたりにあったのではと想像してみた。神社仏閣めぐりは、こんな所がおもしろいと思う。そんな気持ちでカメラを持って出雲大社を散策している時、妻との出会いがあった。もし、私にこんな趣味がなかったのなら、妻とは出会っていなかった。

鏡の池

 

 こんな趣味がなかったらよかったのに。妻との出会いがなかったら、こんな悲しく苦しく切ない思いをすることもなかったのに。時々そんなことも思って見た私なのに、今日はどうしたことだろう。昔の私に戻っている。歴史と、神話の世界に心を奪われている。これが本当の私なんだ。

 

 ヤマタノオロチ退治の話は奥出雲町の鳥上の話だ。だとしたら、横田に稲田神社があるのは当然だろう。そこが最も、クシナダヒメ生誕の地にふさわしい。そして二人の新居の八重垣神社が佐白に存在するのももっともな話だ。スサノオノミコトもクシナダヒメもヤマタノオロチも、みんな架空の存在なのだろうが、神話と現実がごちゃ混ぜになって私を夢の中に誘ってくれる。ロマンチストだねって、妻が私に言ったのもうなずける気がした。

 

 今日はこれで帰ることにする。コンビニで菓子パンと缶コーヒーを昼食にと仕入れた。車を走らせながら菓子パンをかじる。走馬灯のように、妻との暮らしの思い出が心の中を巡っていく。そして妻のいない寂しさに気付く。嗚咽が漏れる。でもその寂しさは瞬時にどこかへ飛んでいった。悲しい時は思いっきり泣こう。それは瞬間のこと。今日は、自分らしさを取り戻した気がした。本当の私を取り戻した気がした。なぎさ、もう大丈夫だ。長いトンネルをやっと抜け出た。心配かけたな。

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