5月1日

2023年05月01日

葉 5月になった。いかにも五月晴れらしい朝を迎えた。温かい。事務所前の落ち葉を掃き清めた。その瞬間風が強くなった。事務所裏からクスノキの落ち葉が舞い踊って来て、あっという間に再び事務所前に散らばった。そしてそれがつむじを作り始めた。・・・これが人生だよ。順調にいかないのが人生だよ。これが人生の縮図だよ、と思った。

 

 昨夜、私はどうして、妻に対してこんなにも未練がましいのだろうかと考えてみた。どうしてこんなに悲しいのだろうかと考えてみた。だが、なかなかに結論は見いだせなかった。そしてしばらくの時間思考することをあきらめた。そしたらやがてふと、と言うか突然に思い当たることがあった。

 

 私と妻は、いつも一緒だった。仕事もプライベートもいつも一緒だった。いつも一緒に居て苦痛じゃないのって他人は言った。いいや、苦痛なんかじゃないよ。とっても気楽で楽しいよって妻とふたりで答えていた。だから、休みの日も朝から晩まで一緒に居た。一緒にドライブ小旅行を楽しんでいた。

 

 私は、妻のことが大好きだった。心の底から愛していた。人を好きになるって、それは能力なのかもしれない。私に与えられた、人を愛することができる能力なのかもしれない。・・・そう思った。その能力は、私の人生から来ているのかもしれない。あるいは妻が与えてくれたものかもしれない。そうだな、そのふたつが合わさったものなのだろうな。昨夜、そんなことにふと思い至った。

 

 朝、カウンターに置いた飛沫防止のパーテーションを取り除いた。風景がすっきりとした。開放的になった。こんなことでも、人の気持ちって、変わるものなんだ。そう思った。

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