店主日記

  • 飛び散る波しぶき 2026年04月20日

     二人の住まいは遠距離だったので文通での交際だった。知り合って半年余り経った頃だろうか、もう一度会おうということになり、約束をした。会う場所はふたりが住む中間地点、鳥取市と決めた。私は3時間近くかけ、車で向かった。鳥取駅の階段を、改札口に向かって降りてくるだろう彼女を緊張しながら待った。

     

     当時、鳥取市について無知だった。どこへ行く当てもない。とにかく車に乗り込んで走り出した。すると、妙に路上に建つ賀露港の案内板が気になりだしてハンドルを向けた。人っ子一人見当たらない閑散とした漁港だった。冬の荒波が防波堤に砕かれて空に飛び散っていた。白波が太陽の光を弾いて美しかった。

     

     先日来、命日は妻との思い出と過ごすためにどこに行こうかと迷っていた。出雲大社か鳥取市かと迷って結論は定まらなかった。だが昨日、突然賀露港の防波堤に砕かれて飛び散る波しぶきの記憶が鮮やかに蘇ってきた。そうだ、23日の妻の命日は賀露港に行こう。

  • 花の中に花が咲いている 2026年04月19日

    夢 昨夜夢を見た。ストーリーなど覚えていない。ただ、その夢の中には妻がいた。3人の子供たちがいた。そして今朝、7時半に目が覚めた。明るかった。障子越しに陽の光が差し込んでいて、明るかった。もうみんな、起きているのだろうかと耳を澄ませた。ほんのわずか後、気が付いた。夢だったんだ。

     

     ほんの時々、妻の夢を見る。だけど、顔も姿も見えない。気配だけ。私の横か、斜め後ろに気配だけ。そして目が覚めた時、いつも今朝のように思う。もう起きたのだろうかと。そして耳を澄ませて気配を探る。だが、ほんのわずかの後、夢だったんだと悟る。

  • 2026年04月18日

    混合 ツツジの花は、木から立ち上がった本の部分はロート状になっていて、先の方は5枚にさけている。だから花びらは1枚なのだ。その花にピンクのと紫のと白いのがあると先日来書いてきた。今朝よく観察すると、数知れない花の中に1輪だけ、ピンクと紫とが入り混じったのを見つけた。ピンクになろうか紫になろうかと悩んだ末に得た結論なのだろうか。

     

     今朝、事務所のバックヤードの流しでの事、電気ポットに瞬間湯沸かしから流れるお湯を入れていた。突然、恋しくて会いたくてたまらずに妻の名を叫んだ。この頃、よくそんな日がやって来る。妻の命日が近いからかもしれない。23日を、妻の思い出とどう過ごそうかと悩むからかもしれない。

     

     花が好きなせいもあるかもしれない。この季節に咲くからかもしれない。日に何度か、ツツジの花を見に玄関を出る。正面の、県道の歩道と車道の間の植え込みにほほ笑んでいるツツジが恋しくもある。

     

     あ、バッタだ。のぼり旗に止まり、そして玄関にやってきた。取っ手の周りを動いている。まるで事務所に入りたいみたい。そっと近づいてやさしく手を差し伸べたらどこかに飛んで行った。しばらくしてまた帰ってきた。よほどここが恋しいらしい。ふと、妻かもしれないと、思ってしまった。

  • あ、白い花 2026年04月17日

    純白の花 午前中、「あじさいの会」の月例会があって出席した。今日の参加者は多かった。お昼になって、5人で昼食会。それが2時間続いた。話を聞いていて、ひとり親になったのは、やはり私だけらしい。男親で、なにをしていいか分からず、ごめんなってそう思った。

     

     日常と違う行動をすると、疲れるものらしい。2時半に事務所に帰った。ほっとして、応接の籐製の丸い椅子に座った。もう、何もする気などしやしない。朝のうちにすることをしといてよかったなと思った。背伸びして、ツツジの植え込みに目が向いた。おや、白い花が咲いている。それが、雲の白さを写してなお白い。初めて見る純白の花、そうなんだ。色が無いのも個性なんだ。

  • 花の色はうつりにけるないたづらに 2026年04月16日

     定休日の夕食は、豪華な食事を沢山作って食べることにしている。豪華と言っても、私が言う豪華なのだから知れたものだ。昨夜は、大きな平たい皿に、千切りキャベツを乗せた。その脇に、ポテトサラダとトマト1個を六つ切りにして並べた。トンカツを2枚揚げて、その下にはナポリタンを1人前敷いた。トンカツソースは市販のもの。ボリューム満点の、昨夜の夕食だ。時価800円を豪華だと言う、これが私の孤独解消法だ。

     

    ツツジ 一夜明けた。晴れているが昨夜は雨だったらしい。事務所前の植え込みのツツジの花は濡れていた。その雨露の一粒一粒が太陽の日差しを弾いてキラキラと美しかった。思わずスマホで写真を写した。写真を撮れば、店主日記書きたくなる。これがボケ防止法と言えばそうかもしれない。

     

     20年前のこのツツジの植え込みは、ピンクの花1色だった。だが、毎年少しずつ、紫色のが咲くようになった。そしてその紫は少しずつ増えて行った。・・・花の色は うつりにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに・・・

     

     この歌は、古今集にある小野小町のだそうだ。花とは桜の事、ツツジではない。・・・桜の花の色はむなしく衰え色あせてしまった。春の長雨が降っている間に。ちょうど私の美貌が衰えたように、恋や世間のもろもろのことに思い悩んでいるうちに・・・

     

     美貌とは無縁だが、ツツジを見た今朝の私は小野小町の心になった。桜の花とスパンは違う。ツツジの花の20年と言うスパンを見た時に、私も色あせて来たもんだとそう感じた。今朝も重要事項の説明をした。指先の潤いがなくなって、ページがはぐれやしない。掃き掃除をするときに、己の体重を重く感じてしまう。

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