チューリップ

2020年03月13日

 チューリップ

 黒地に白い星がいっぱいデザインされたマグカップが鉛筆立てとなってパソコンデスクに置かれている。その中のボス的存在が妻が持って来たボールペンなのである。そのボールペンの頭はチューリップの造花になっていて可愛らしい。どこで買ったものかは私は知らないがここに居座って何年が経つのだろう。

 

 チューリップが咲くころに、妻は突然あの世に向かって旅立ってしまった。少し早いが今度の15日の日曜日に三回忌の法要を営む計画だ。昨夜、夫と一緒に帰ってくる広島に嫁いだ長女が電話をしてきた。「前の日の夕ご飯は私が作って持って行くから心配しないでね。お酒はたくさん買うんじゃないよ」

 

 昼になっていつものように近くのコンビニで弁当を買ってきた。いつものように妻のワークデスクに座って頂く。一口食べたところで昨夜の娘の電話を思い出した。優しいな。こんな優しさって、妻が亡くなって以来だなって、そう思った瞬間、涙がこぼれてきた。

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