命日

2021年04月24日

 駅

 

 4月23日は妻の命日である。金曜日だったけれど、仕事も休んで思い出の鳥取市に行ってきた。朝早くから、山陰道のない当時と同じように国道9号線をひたすら走る。3時間前後を要して鳥取駅に着く。あの時と同じだ。あの時と同じ改札口前に立つ。人々の中に、階段を下りて来る後に妻となる彼女の姿を見つけた。

 

観音院

 

 どこへ行こう。今日は観音院に行ってみようか。そうだねって話がまとまって、池を前面に配した庭園を眺めながら抹茶を頂く。そんな思い出があるんですよ、ここにはってお茶をサービスをしてくれた奥様に言う。今日は命日でねって。じゃあ今は一人暮らし?って聞かれて、子供たちも皆出ていっちゃったから。

 

 観音院を後にしてすぐ近くにある樗谿公園に行った。今では公園としてきれいに整備されているが、35年前はこうではなかった。小川が流れていて、蛍の生息地だと書かれた看板を見つける程度。ずいぶん姿が変わったんですねって、年配の女性に問いかけてみる。今日は妻の命日で、思い出をたどって来たんですよ。

 

樗谿

 

 今日はここまでにしようって松江に帰ってきた。車の修理の予約に島根日産に寄る。顔見知りになれた受付のカウンターの女の子たちに言う。今日は妻の命日でね、鳥取に行って思い出をたどって来たんだ。二人が住む真ん中の鳥取がデートの場所だったんだ。駅の改札口でね、階段を下りて来る彼女を待ったものだよ。月一回のことだったんだ。ロマンチックでしょ。

 

 夜になって焼酎のお湯割りをちびりちびりと飲みながら今日一日を振り返ってみた。かあちゃん楽しかったなって。かあちゃんのこと、今までは言葉が詰まって人に話せなかったのに、今日は笑顔で話せたよ。妻にそう言って話しかけていたら涙がこぼれ始めた。とめどなくこぼれて来る。でも、悲しい涙じゃない。妻との、思い出がいっぱい詰まった涙なんだ。二人の、思い出が嬉しい涙なんだ。私にはそんな思い出がある、その感動の涙なんだ。

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