プラトン 訳

2020年11月26日

 いつもの花屋さんとお墓には行ったけれど、いち日中家にいて断捨離の実行をした。今日からは妻が化粧室として使っていた部屋の押し入れだ。ずいぶんと多くの箱の中に多くのものが収めてある。ひとつひとつ確認しながらの作業である。中に、マジックインクで書かれた「プラトン 訳」の箱があった。妻は、大学でギリシャ哲学を学んでいたのである。

 

 数十冊のノートに、妻の字がぎっしりと埋まっている。晩年の、流れるような崩し字は見つからない。青年らしい、だけどまだあどけなささえ感じてしまう硬い角ばった字が並んでいる。背伸びして、それでも懸命に主張しようとしている字が並んでる。その、ひとつひとつの字の所々に晩年の妻の崩し字の原型を見た。これは、本棚の哲学書の横に並べておこう。

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