グレープ
休みだからゆっくり寝たかったのに、6時前に目が覚めた。もう少し寝ようと思うのだが眠れない。それでも8時まで耐えた。そして限界を感じて起きた。昨夜、息子に会いに行こうと決意したからだろうか。そうかもしれない。そのことを重荷に感じていたからかもしれない。
公園墓地から、山陰道の側道を少しかすめて国道9号線に出た。玉造温泉入り口の交差点を過ぎると宍道湖が視界に飛び込んでくる。湖面は静かで、いち面に朝の光を浴びていた。鴨たちが、気持ちよさそうに等間隔で浮かんでいた。あの鳥たちにも、悩みのひとつやふたつあるのだろうか。そう思うのは、私のひがみなのかもしれないと思った。
病院に着いた。まだ息子は身体拘束されていた。そんな息子を見るのは辛い。心が苦しい。だが、拘束をとく練習を少しずつだがしているとか。それを聞いて、ちょっぴり心安らいだ。眠っている息子を起こさずに少し見守ったが、やがて病院を後にした。26日に再びやって来るからなと言って。
いつものコースで三瓶山に行くことにした。9号線から見る日本海も波静かだった。大田市から北の原に向かった。49日が終わって、緊張の糸が切れたようにこの道を走りながら涙を流した。妻のことを想いながら涙がいっぱい流れて来た。以降、泣かなかった私が涙もろい男になってしまった。このことも、もう思い出に変わろうとしている。
三瓶山は通り過ぎただけで頓原から国道54号線に出た。いつもより強く、今日は妻の思い出に浸ってしまっていた。ちょうど、音楽はグレープが歌う「精霊流し」に変った。妻を想う時、グレープが歌う声はよく似合う。「無縁坂」、「縁切寺」の3曲を繰り返し繰り返し聴いた。
写真は本文とは無関係だが、先日行った私の好きな町、岡山県真庭市の勝山町の一角を切り取ったものだ。雛祭りの3月3日前の一週間、この町のいたるところに雛人形が飾られる。3月3日生まれの私と、何か縁がありそうで。