満開の桜

2025年04月04日

 妻は7年前の今月に亡くなった。その年の夏、松江市が管理するこの公園墓地を墓所と定めた。以来、訪れることが不可能な日以外は毎日の墓参を続けている。今では花も生けなくなったけど、毎日の墓参は欠かさない。蝋燭と線香を灯し、数分だけどふたりで会話する。

 

 インドアな妻を、アウトドア派にしたのは私だろう。キャンプもしたし、休みの日はどこか車で連れ歩いていた。妻もそれを喜んだ。晩年は、今度の休みどこに行くって話しかけたのは妻からだった。サザンが好きだった妻、70年代のフォークソングはふたりの会話の潤滑油だったのかもしれない。

 

桜

 

 妻亡き後、狂ったように車で走り回った。ドライブは、妻の笑顔と寄り添うのに向いていた。春は、あちらこちらに桜の花を見た。あれも、妻とふたりで見た桜だなと思っても愛でる気にはなれなかった。そんな心の余裕など今の私にはありゃしない。だが、ここの桜だけは違う。妻とふたりで愛でている。この坂道を少し上った左手に妻の墓所はある。

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