初詣

2024年01月10日

 アスファルトに溜まった雨水を車がシャーと音を立てて轢いて行った。今日は雨なんだ。連休二日目、昨日あれだけ楽しんだんだから今日は雨でもいいだろう。ゆっくりしよう。そう思いながら気怠く目覚めた。そしてパンをかじりながら思った。今日は出勤して、少し仕事もしようか。七回忌の法事の予約もお寺にしとかなきゃ。

美保津姫

 

 美保神社に初詣に行った。今日が仕事始めの社員達なのだろう、背広の男性や、スーツ姿の女性達のグループがいた。他の参拝の人たちもいつもより多かった。美保神社はまだ、正月の余韻を残していた。青石畳通りを歩いた。風待港として栄えた往時の賑わいが映像として見えてくる気がしておもしろいと思った。

 

 美保神社には二神がまつられている。左側の本殿に「事代主命」右側の本殿に「美穂津姫命」 出雲風土記には「御穂須須美命」だけとしてあるらしい。古代には一神だけだったんじゃないかと歴史家は言う。事代主命をまつるようになったのは、記紀神話の国譲りの影響だろうと。

 

事代主 美保神社を後にして米子市に向かった。昼が近くなってきた。さあどこを走ろうか。思案していたら思い付いた。国道181号線から日南町を通って奥出雲町に抜けて帰ろうと。夕方5時前には帰れるだろう。

 

 車は快調に走った。道の駅「奥大山」で缶コーヒーを買った。年が明けてから思うことがあった。いつまでも、妻の死を悲しんでちゃいけない。私らしく生きていこう。今年の七回忌を、私の気持ちの変換の年にしよう。その気持ちを反芻しながら車を走らせた。

 

 やがて、日南町の道の駅「にちなん日野川の郷」に着いた。時刻は1時30分。売店に入った。昼ご飯代りになるものはと物色した。いろいろ面白いものが売れていた。「大煎」を買った。だいせんと読むらしい。大山とかけたのだろうと思った。

 

 ここからしばらくは、私の気持ちを確実なものにしよう。その時間にあてよう思った。九十九に折れた峠道を走った。所々に圧雪もあった。運転に気をつかう道なのだが、それは苦にならなかった。むしろ楽しく感じられた。カーステレオの音も耳には入ってこなかった。車の運転技術に酔いながら、でも意識はそこにはなかった。

 

 鳥取県境を超えた。島根県の奥出雲町に入った。平地の外気温は11度だったのに3度に変わった。そして数字は0度になっていた。真っ白な風景が広がっていた。遠い子供の頃が思い出された。私の生家も根雪がいっぱいあった。昔はこんなものじゃあなかった。生活は雪に埋もれていた。

 

 三成駅前を通過した時、体と心が結びついた気がした。心の中で快楽が芽生える気がした。次第にカーステレオの音が聞こえだした。さあ、帰ろうか。今晩は何食べようか。なんだかいつもより疲れた気がした。コンビニ弁当にしようかと思った。自宅近くに着いた時、時々行くファミリーマートでかつ丼を買った。レジはいつものあの女性だった。 

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