喜びの涙を知った日

2020年12月05日

 先日、嬉し涙を書いた。そう言えば、嬉し涙を何回流しただろう。小さい頃からの記憶をたどってみる。が、ひとつ見つかったけれどあとは見つからない。嬉し涙は、私の人生で2回だけ。53歳の師走に1回。そして先日。悲しみはいっぱいあったけど、涙を流すほど嬉しいことはなかったということだろう。

 

 52歳の年末、病気で仕事を失った。途方に暮れた。長男は中学生、二人の娘は小学生。障害を持つ長男の世話で妻は働けない。人生最大のピンチである。3ヶ月悩み苦しんで、消去法で、不動産業を立ち上げようと決意した。それしか生き抜く方法はない。そして6ヶ月の猛勉強。宅建の免許である。

 

 合格発表の日、朝一番で建築センターへ行く。合格者名を記した、A3の白い紙を見る。あった。私の名前があった。猛勉強が実を結んだ。安堵して、車で宍道湖一周することにした。喜びをかみしめる時、涙がにじんできた。走る車の前方が見えにくい。けど、遠慮なく涙はあふれる。初めて、喜びの涙を知った日である。

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