八塔寺散策

2019年04月16日

 島根県仁多郡奥出雲町は私の故郷である。私は、中学を卒業するまでの15年間ここで暮らした。その後50年以上も経過した今になって、使っていた方言で一番懐かしい思いがする単語はハットウジという。奥出雲町は、カメムシのことをハットウジと言っていた。つい最近になって、その名は、岡山県備前市にある古刹「八塔寺」に語源があるらしいことを知った。ならば行ってみたい。知らない街を歩くように、八塔寺周辺を歩いてみたい。そんな衝動にかられたのである。

八塔寺全景

 

 そのチャンスは案外早くに訪れた。平成最後の年、31年4月9日早朝の6時、一日分の着替えを持って松江市の家を愛車「ラフェスタハイウェースター」で飛び出した。コンビニでサンドイッチを買って安来市の道の駅「あらえっさ」で食べるこんな朝食も、一人旅の醍醐味である。

 

 米子市から米子自動車道に乗り、途中山陰道に乗り換えてカーナビをセット。カーステレオからは私好みの70年代のフォークソングが流れている。なんという、素晴らしい青空のドライブ日和なのだろうか。

 

 県道ではある。が、相当の悪路だ。カーナビ頼りがいけなかったと思ってもすでに遅い。ユータンはおろか、バックすら困難なけもの道。何とかなるだろうと進め進めのヤケ行進。30分に渡る苦闘の末の到着に、胸をなでおろす気分であることは言わずもがな。

八塔寺からの眺め

 

 映画のロケ地にもなった寒村である。公園として整備されている。茅葺屋根の民家の点在だ。写真は公園整備に作られたものだろうがこんな民家が八塔寺をかばうみたいに建っている。私にとっては懐かしい風景だ。

 

 軽食喫茶の店が営業していた。昼食には早かったのでコーヒーを注文して早速ハットウジを聞いてみた。地元ではカメムシと言うけれどハットウジとは言わないらしい。当たり前だと思った。我が故郷ではハットウジは臭いものの象徴だから。

 

 その後、鳥取への道を進む。途中、いにしえの剣豪、宮本武蔵の生誕地を見学の後、鳥取の久松公園の散策、県立美術館を見てホテルにチェックイン。夕方の鳥取市をしばらく歩いてから食事。スナックにぶらっと入って知らない若い人たちとの会話は楽しかった。

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