藤の花

2020年05月05日

 ステイホーム。私にとって家にいることは、発狂するほどに無残な仕打ちなのである。テレビで緊急事態宣言延長のニュースをきいていても、政治家トップの我が思惑に都合のいい数字だけが並ぶのは空しいだけ。心に響く何ものもない。

 

 先日今井書店で3枚の図書カードで仕入れておいた、数冊の文庫本を持って車で出かけることにた。目的地は山の中。人がいない静かな場所を目指して車は走る。駐車場のある山頂で車を止める。しばし読書を楽しむ。読書と言っても、難しいものではない。内田康夫の推理小説「不等辺三角形」だ。

 

 前部両サイドのドアのガラス窓を開け、小鳥の鳴き声を遠くに聞いて、爽やかな五月の風を肌で感じながら心は小説の殺人現場に舞っている。そんな非現実の推理をしばらく楽しんだ後、再び車で走ることにした。しばらくするとガードレールのすぐそこに、紫色の藤の花がその艶やかさを誇っていた。

藤

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